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YAMAHAのウィンドシンセ、WX11とWX5の説明です

YAMAHA WX11とWX5 YAMAHAのウィンドシンセスティックは2本所持している。
「ウィンドシンセ」は通称であり、正式な呼び名は「ウィンド・シンセサイザー」。
持っているのはどちらもYAMAHA製のWX(ダブリューエックス)シリーズ。
WXを「ダブルエックス」と発音する人が多いが、本当は「ダブリューエックス」であり、「ダブルエックス」を発音通りに表記すると「XX」となってしまう。
旧型のWX11(「ダブリューエックス・イレブン」写真左・黒)と、新型のWX5(「ダブリューエックス・ファイブ」右・シルバー)。
WX5はWX11に比べて、格段に機能面・性能面で上回っている。
実際にステージに持って上がるのは、最近はWX5がほとんどだ。
ステージ上で結構動く癖があるので、WX5よりも軽く取り回しやすいWX11がなかなか手放せない時期もあったが、この程度の重さなど慣れてしまえばなんということもないわけで。
YAMAHAがWX5を作るときに、吹き心地や操作感をソプラノサックスのそれに近づけたらしく、電子楽器なのにある程度の力を込めてボタンを押す必要がある。(サックスに比べれば話にならないほど軽いけど)
この辺が妙な感覚で、ボタン自体はフニャフニャなのだが、「カチッ」と押してから僅かな力で「グッ」と押し込まないと、ノートが切り替わらないのだ。(WX11は「カチッ」と押すだけでノートが切り替わる)
いつも思うのだが、WX5のボタンを 静電容量無接点方式 で作れば、とんでもなくタフな機構が作れたんじゃないかなと。
この辺、キーに触るだけで切り替わるAKAI製のEWI(イーウィ)は無敵だなぁと思う今日この頃。
慣れないうちは速いパッセージを演奏する際にモタついてしまったり、音が抜けてしまったりすることがよくあったが、最近では起きなくなった。こんなもん、慣れ以外のなにものでもない。
WX11の持つ、楽器とも機械ともつかないフォルムは非常にカッコイイと思う。(素直に言えば機械好きの心をくすぐるというやつだが)
しかし、よくよく見ると世界初のウィンドシンセ「リリコン」に微妙に似て無くもない、WX5のフォルムもまたカッコイイと思う。
機能面から見ると、WX5の持つウィンドシンセとしての高い完成度、そしてWX11では味わえなかった痒いところに手の届く感じがとてもいい。
WX5への完全移行を目指して半年ほど苦戦していたが、なんとかそれは実現したようだ。
指は左右10本、親指から小指まで全て使う。
さらにマウスピースに付いているリードを噛むことにより、微妙な音程を調整できるようになっている。
噛む力を強めると音程が高くなり、弱めると低くなる。
私はサックスのアンブシュアというより、キーボードのピッチベンドホイールのような使い方をすることが多いのだが、リードの動く範囲が結構狭いので、えらく微妙。
余談だが、リードが値上がりを続けているのが痛い。
吹き始めた頃1枚¥80だったリードが、数年後に¥160になり、今では¥360まで跳ね上がった。
派手なパフォーマンスをするときに、歯でダイレクトに噛むため結構早く割れてしまう。(私にとってのWXは、サックスの換え楽器などではなく、完全に新しい「楽器」なので・・)
いつも10枚単位でのまとめ買いをするため、最近ではかなり財布に悪い。
サックスのリードでも、1枚百数十円であるのに。
また、電子楽器とはいえ、吹き系楽器なので当然肺活量や腹式呼吸など、基本的なものは必要。
WX11とWX5のキーの違い
WX11とWX5の背面 裏面もボタン・コントローラ群が並ぶ。
WX11では5つあったオクターブキーが、WX5では4つに減っている。
上3つの真ん中ボタンが無くなり、2つ同時押しでそれをカバーしている仕様なのだが、これが曲者。
はっきりいって演奏しにくいことこの上ない。
地蔵のように動かないスタイルで演奏するならともかく、結構動くので同時押ししている指がズレて「パキッ」と音が割れてしまうことがあるのだ。
この辺り、YAMAHAの意図がよく分からない点でもある。
しかしこれも慣れてきた。人間の適応能力ってすばらしい。
右親指で操作するベンダーホイールが面白い。
リードでカバーできないような派手なチョーキングも行えるので、エレキギターなどを模倣するときなどは非常に効果的。
また、WX11ではMIDIコンバータBT7から供給する外部電源のみだったのだが、WX5では単4乾電池6本を内蔵できる構造になっており、汎用MIDI音源をダイレクトに接続できる点も面白い。(おかげで重いのだが)
ちなみに音域は、WX11が7オクターブ半、WX5が9オクターブ。(共に裏技使って)
WX5にはトランスポーズ機能があり、上下それぞれ3オクターブまで移動することができる。
これに加えてさらに音源側で上下2オクターブまでのトランスポーズをかけられる。
可聴域を超えた低周波や超音波までも出すことが可能・・?(音源やPA、モニタにかなり依存すると思うけど)
この辺がWX5のたまらない魅力。
1オクターブ半しか音域を持たないオカリナとはえらい違いだ。
上から、SRA-50(アンプ)、VL70-m(バーチャル・アコースティック音源)、SC-88Pro(GS音源)。
ウィンドシンセは全てこれら音源とPAが無ければただの棒で、吹いても全く音が出ないのだ。
VL70-mに256種類、SC-88Proに1117種類の音色がプリセットされている。
さらに自分で音色を作ることができるので、出てくる音色数はほぼ無限。
WX11だとVL70-mしか使えないが、WX5は自前でMIDI出力をもっているため、VL70-mやSC-88Proに限らず汎用MIDI音源なら何でも使える。
ピアノ、三味線、ドラムから、猫の鳴き声や人の声まで出すことが可能。
音を作り出すとこれがまた楽しく、気が付いたら朝になっていることも・・過去にはあった。
SRA-50とVL70-mとSC-88Pro
YAMAHA BT-7 WX11用のMIDIコンバータ、BT7。
単3乾電池が6本内蔵でき、ウエストポーチのようにズボンのベルトに装着できるようになっている。
WX11で汎用MIDI音源が使いたいときはこれが必要なのだが、肝心要の機能が付いておらず、ほとんど使用したことはない。
その機能とは、WX11から出力されるMIDI信号の「ブレスコントロール(#2)」を「エクスプレッション(#11)」に変換するフィルタ機能。
このフィルタ機能を実現するためのパソコンのソフトもあるのだが、使うとなるとこれらの機材に加えてステージやライブハウスにパソコンまで持ち込まなくてはならないため、えらいことに。
そんなわけで、いつもはブレスコントロールを直接受信できる音源、VL70-mを愛用している。
ちなみにWX5は自前でエクスプレッション信号を出力できる。
WX5は、まさにいたれりつくせりな仕様なのだ。
ウィンドシンセの歴史は意外に古く、1970年代に発祥した。
半導体メーカーのCOMPUTONE(コンピュートーン)社が発売した“Lyricon”(リリコン)が、世界初のウィンドシンセと言われている。
歌うように(リリカル)操作する(コントロール)。
歌を歌うように演奏する、という意味を込められた造語だが、センスいいネーミングだと思う。
今でもウィンドシンセ一般を「リリコン」と呼ぶ人もいるくらいで、これはSONY社の「ウォークマン」やATLUS社の「プリクラ」のように、商標名が一般名として定着したためだろう。
日本では「電気サックス」や「電子クラリネット」などと呼ばれていたこともある。
ちなみにCOMPUTONE社自体は、残念なことにすでに倒産していてもうこの世にはない。
mas++氏のイラスト
イラスト提供:mas++氏
ウィンドシンセの接続図
リリコンには当時「Lyricon I」、「Lyricon II」、「Lyricon Driver(←よしめめさんサイト)」の3種類のラインナップがあり、当時の価格でそれぞれ18万円、70万円、50万円と非常に高価なものだった。
実際にはこれに加えて音源やPAが別途必要なため、演奏するための機材をひととおりそろえると100万円にも150万円にもなってしまうシロモノだった。
現在AKAI製のウィンドシンセ「EWI(イーウィ)」を吹いておられる伊東たけし氏は、このリリコンからの奏者であり、「Lyricon I」と「Lyricon Windsynthesizer-Driver」を使用されていた。
この時のLyricon Iは「THE SQUARE LIVE」中の「JAPANESE SOUL BROTHERS」で見る事ができる。
リリコンをはじめとするウィンドシンセのほとんどのシステムは、「スティック」、「ドライバー」、「音源」の3つの部分から成り、ウィンドシンセというものは、その3つの総称となっている。
スティックの部分だけがウィンドシンセと思われがちだが、実は氷山の一角なのだ。(最近の新しいモデルは、アジャスト機能やある程度のカスタマイズ機能がスティックに内蔵されているものが多く、最新のEWI4000sには音源やエフェクタまでも内蔵されてしまった。そのうちこんなウィンドシンセ(←Kirinoさんサイト)が本当に発売される日が来るのかも知れない)

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